
必要金額とは?開業資金と融資申請額の考え方・決め方を整理
創業融資申請時の必要金額の影響
「できるだけ多く借りておきたい」
「借入額は少ないほど、審査に通りやすいのでは」
創業融資を申し込む際、このように考える方は少なくありません。けれど創業融資の必要金額は、多すぎても、少なくても悪影響となる可能性があります。
必要以上に大きな金額を希望すれば、「なぜそんなに大きい融資希望額なのか」が問われます。一方で、必要金額を少なく見積もれば、「開業資金と融資金額を合わせて本当に事業を開始・継続できるのか」と審査担当者に思われてしまいます。
この記事では、創業融資でいくら借りられるか以前のおはなし――
開業資金の中の、創業融資が必要な金額を決めるにあたっての考え方を解説します。
執筆・監修:行政書士 𠮷岡 秀充
※ このページは「創業融資で確認したい6箇条」の 01 必要金額 にあたる解説ページです。
- 創業融資の必要金額とは
- 必要金額が多すぎても少なすぎても審査に影響する理由
- 必要な金額を細かく洗い出す
- 開業後のことも考えられているか
- 創業融資の必要金額を決めるときの順番
- 関連解説|創業融資で大事な6箇条
- よくある質問
- まとめ|必要金額は根拠をもって決める
創業融資の必要金額とは

創業融資における必要金額とは、単純な「希望借入額」ではありません。
基本となるのは、開業資金です。
たとえば、「500万円くらい借りたい」と先に融資希望額を決め、後から500万円になるように支出を組み立てるのではありません。以下の検討が必要となります。
- 開業までに設備や許認可などいくら必要になるのか
- 開業直後にどの程度の支出があるのか
- 売上が安定するまでにどの程度の資金を残しておく必要があるのか
これらを検討した結果として、開業資金の総額が見えてきます。
創業融資申請する「必要金額」は、この開業資金の総額のうち、自己資金が不足している部分を補うためにお金を借りるというものです。
したがって、起業するための開業資金の総額を先に確定させる必要があります。
申込先が変わっても、考え方は共通です
日本政策金融公庫、信用保証協会付き融資、神奈川県・市区町村の制度融資――どの制度を利用する場合であっても、「必要資金の総額とその根拠」が出発点になる点は変わりません。
先に申込先を決めてから金額を合わせるのではなく、必要金額を整理したうえで、どこへ申し込むかを検討していきます。
CHECK
必要金額が多すぎても少なすぎても審査に影響する理由

創業融資では、借入希望額を小さくすれば審査に通りやすくなるとは限りません。金額の大小そのものではなく、事業計画に対して必要金額が適切であるかが確認されるためです。
① 必要金額が多すぎる場合
事業規模に対して設備導入や工事費用などが過大な投資になっていないか、その設備や支出が開業時点で本当に必要なのかが問われます。
大きくなった金額を根拠をもって、絶対に必要であると説明できない場合、「経費を抑える能力に懸念がある」との印象を与え、創業計画全体をさらに細かく審査されやすくなります。また、借入額が大きくなれば毎月の返済負担も重くなり、開業後の資金繰りを圧迫し、資金ショートへと繋がります。
② 必要金額が少なすぎる場合
不足分が500万円と算出したのに、経費を何とか抑えるから「400万円の借り入れがあれば大丈夫」として400万円の創業融資を申し込んだ場合、「100万円も経費をお抑えることができるのか」「この融資額で本当に開業し、事業継続できるのか」という審査担当者への印象を与えることとなります。
仮に開業できたとしても、運転資金が尽きれば、早い段階で資金不足に陥ります。
③ 事業開始後は、多くても少なくてもどちらにしろ借り入れが厳しい
開業後に資金が不足しても、創業時と同じ方法で融資を受けることができません。
すでに事業を開始している場合、創業前の計画だけでなく、実際の売上・収支・資金繰りの「実績」も判断材料となるためです。この場合、開業前と比較して、融資審査通過の難易度としては厳しいものとなります。
必要金額の根拠が甘いと、面談で厳しく問われます
当事務所代表も2011年の創業時、日本政策金融公庫の面談で「ほんとに事業をやる気があるのか」と指摘を受け、最初の申込みは実行に至りませんでした。創業計画書の内容、必要資金や売上数字の根拠、面談での受け答えまでの準備が不十分だったためです。
必要金額は、審査担当者から「真っ先に」確認される項目のひとつです。詳しくは代表者の創業融資体験をご覧ください。
必要金額は、「現実的」な整理が大切です。
必要な金額を細かく洗い出す

必要金額を決めるときは、概算だけで判断せず、開業までに必要となる支出を項目ごとに細かく洗い出すことが大切です。
なぜ細かく洗い出す必要があるのか
単純な話、「ざっくり計算したところ、500万円の借り入れで足ります、500万円貸してください」で借りることができるケースは少ないと思います。
本当に返済してもらえるのか不安だからです――
必要な金額は事業内容・事業規模、営業方法、設備の内容、雇用の有無など様々な要因によって大きく変わります。
また、ざっくりの計算では、一件ごとの金額が小さくても、積み重なると数十万円単位になってもおかしくありません。項目を粗いまま合算すると、後から追加費用が発覚し、当初の必要金額そのものがぶれてしまいます。
必要金額の洗い出しが難しい広告宣伝費
細かい洗い出し方法は【創業融資の資金使途の考え方と資金使途違反にならないための注意点】で解説します。
ここでは、必要金額の算出漏れの起きやすい広告宣伝費を一例として取り上げます。
SNSは有料版か無料版か、ポータルサイトへの掲載料がいくらか算出し、さらに専門的な内容として、開業前の一時的支出(ホームページ制作など)や、開業後も集客のために継続的に発生する支出(検索順位対策やMAP集客対策は必要か)です。
創業融資申請の対象として含む場合、「設備資金」・「運転資金」として含める必要があります。
そして、広告宣伝費は、税理士や中小企業診断士でも、創業融資サポート行政書士でも、経営財務コンサルタントでも、正確に算出することができません。
Web制作会社の場合、算出は可能ですが、事業戦略家ではないため、集客できるように進めることができるのか不透明な部分があります。
単にホームページを作る「だけ」、集客施策を実装する「だけ」という算出で終わるケースが多いため、各社連携がうまく取れる創業者自身が動く必要があります。
– 怖いのは算出漏れ –
たとえ細かい性格の方でも、経験の無い「創業」では、不足している項目そのものに気づけず、算出漏れが起きやすくなります。
金額の一部が抜け落ちたまま創業計画書を作成し、融資申請して通過した場合、開業間もなく資金ショートになる可能性――
これが一番怖いところです。
当事務所では、業種ごとに洗い出すべき項目を整理しながら、必要金額の算出をサポートしています。ご自身での洗い出しに不安がある場合は、創業融資申請の専門家にお任せください。
開業後のことも考えられているか

開業後の必要金額の決め方・考え方
開業後の必要金額の考え方は特に難しいです。
融資の実行は起点であり、スタートラインに立ったところです。
スタート後歩き出したら、店舗を開けた翌月からも、開業までに洗い出した支出の多くは、形を変えて毎月の支出として続いていきます。
一方で売上は、開業直後から計画どおりに安定するとは限りません。新規顧客を獲得するまで時間がかかる事業や、リピーターによって徐々に売上が積み上がる事業もあります。
「店を開けるまでにいくら必要か」だけでなく
「売上が安定するまで事業を続けるためにいくら必要か」
創業融資の必要金額を決める際には、この両方の視点が欠かせません。
「事業継続の金額」を決めるには、将来の数字が必要になる
ここまでの必要金額は、資料・見積などを基にすでに決まっている支出を洗い出せば算出できます。
しかし「売上が安定するまで、いくら必要か」を考えるには、まだ決まっていない将来の売上・支出を見通す必要があります。
創業融資のご相談で「将来のことはわからない」と雑に計算するケースがありますが、雑であってはならないことは言うまでもありません。
わからないまでも根拠をもって計算する必要があります。
具体的には、開業後の売上と経費の見通しを示す予想P/L(損益計算書)、そして毎月のお金の出入りを示す資金繰り表です。
この2つがあって、はじめて「何か月分の運転資金を残しておくべきか」という数字に根拠が持てます。
– P/L・資金繰り表の作成は、想像以上に難易度が高い作業です –
「これくらい売れると思う」という感覚だけでは、根拠のある数字になりません。客単価、客数、稼働率、回転率・案件数、受注単価、原価率など、業種ごとの根拠から売上・利益を積み上げていく必要があるためです。
当事務所では、ヒアリングをもとに予想P/L・資金繰り表の作成をサポートしています。数字が苦手な方も、一つずつ根拠を確認しながら進めることができます。
創業融資の必要金額を決めるときの順番

ここで重要なのは、融資希望額を「先に」決めないことです。
必要金額を考える場合は、まず開業までに必要となる支出を書き出します。次に、開業直後に必要となる支出や、売上が安定するまでに必要と考えられる資金を加えていきます。
可能なものについては、資料・見積書・料金表・契約予定額・契約済みの金額など、確認しながら数字を具体化します。
「融資希望額は500万円を元に開業したい」ではなく、「開業準備・開業後利益が出るまで800万円必要で、自己資金が300万円、不足金額が500万円だから、500万円創業融資を申請したい」という流れで考えます。
以下、簡単にまとめた内容です。
必要開業資金を整理する → 自己資金を確認する → 必要な融資額を考える
なお、自己資金については金額だけでなく、どのように準備・貯金をしてきたのかという形成過程も確認されます。
FAQよくある質問
必要金額について、ご相談の中で多かった質問をまとめています。
- 必要金額を一緒に考えてもらうことはできますか?
- はい、可能です。まずは「初回相談」にて、事業構想・自己資金・必要資金の全体像を一緒に整理します。お見積書など、お手元にある資料をご持参ください。なお、予想P/L(損益計算書)・資金繰り表の作成を含めて数字を組み立てる場合は、創業融資申請フルサポートでのご依頼をご検討くださいませ。
- 見積書は必ず必要ですか?
- すべての支出について取得が必要というわけではありませんが、設備や工事など金額の大きいものについては、見積書は必須と言っても過言ではありません。必要金額の根拠を示すためにできる限りの資料を揃えましょう。
- Web集客費用を含んで創業融資申請をしたいです。対応可能ですか?
- はい、可能です。当事務所はWeb集客サービスも行っています。開業準備・その後の流れまで含んで、創業融資申請において最適なWeb集客サービスをご提案します。広告宣伝費を単に上乗せするだけでは融資審査が厳しくなりますので、総合的に検討していきます。
- 開業後の運転資金は、何か月分を見ておけばよいですか?
- 一般的には3~6か月分です。ただし、一律に決まるものではありません。売上が立ち上がるまでの期間は、業種や営業方法によって異なるためです。既存の取引先を引き継げる事業と、ゼロから新規顧客を集める事業とでは、必要な期間が大きく変わります。ご自身の事業で「売上が安定するまでにどのくらいかかりそうか」を先に想定し、その期間の毎月の支出から逆算して考えます。
- 開業後に資金が足りなくなったら、追加で融資を受けることはできますか?
- 融資を受けることは非常に厳しくなりますので、精査・改善策が必要です。すでに事業を開始している場合、創業前の計画だけでなく、実際の売上・収支・資金繰りの「実績」も判断材料となるため、経営者としての「見通しの甘さ」「廃業の危機」も考慮されてしまいます。だからこそ、創業計画作成時に丁寧に、多すぎず、少なすぎず根拠をもって計算することが大切になります。
まとめ|創業融資の必要金額は根拠をもって決める

以下、必要金額の考え方・決め方のまとめです。
– この記事のまとめ –
- 融資申請額 = 開業資金 - 自己資金
- 開業資金総額算出 → 自己資金確認 → 不足金額の確認 → 融資申請額の順番で整理する
- 多すぎは、廃業・資金ショートリスクの元
- 少なすぎは、融資してもいいかの不安材料
- 開業後の資金不足による創業融資申請は審査が非常に厳しい
創業融資申請では、必要金額が多すぎても少なすぎても審査に悪影響となる可能性があります。
開業までに必要となる費用、開業直後に必要となる費用、売上が安定するまでに必要となる資金——これらを合わせた開業資金の総額を整理し、「順番に」「根拠をもって」計算しましょう。
必要金額は創業融資申請おける大切なポイントの一つです――
必要金額が大まか・うまく説明できないまま提出されていると、「この創業者は準備が雑なのかもしれない」という印象につながることがあります。
数字の精度もさることながら、整理する過程を自分の言葉で説明できるかどうか――創業融資では、この面談対策も大切です。
創業融資申請のご相談は行政書士e-LOOP法務事務所へ
「何にいくらかかるのか分からない」
「この金額で足りるのか判断できない」
当事務所代表は、2011年、日本政策金融公庫での創業融資の「否決」と、否決から約2か月で信用保証協会付きでの創業融資の「成功」、両方を経験しています。
必要資金の整理から創業計画書の作成、予想P/L・資金繰り表の作成まで、神奈川県内の創業を戦略的に支援します。
支援内容・料金・進め方については、戦略型創業支援コンサルティング-創業融資相談・申請サポートをご確認ください。
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