
創業計画の売上予測は妥当?売上計画の立て方-根拠と実現可能性
創業計画の売上予測は妥当?
創業融資の申込みを検討している方の中には、創業計画書に記載する「売上計画の立て方がわからない」とお悩みの方や、「売上予測なんて立てられないから適当でいいだろう」とお考えの方もいらっしゃると思います。
この記事では、日本政策金融公庫や信用保証協会付き銀行融資等を念頭に、売上計画が創業融資の否決につながる理由、売上予測の実現可能性と根拠、業種別の売上計画の立て方について解説します。
執筆・監修:行政書士 𠮷岡 秀充
※ このページは「創業融資で否決につながる主な理由」のうち、「創業計画・売上予測の根拠が弱い」にあたる個別解説ページです。
創業融資全体の流れ・申込み前のご相談については、戦略型創業支援コンサルティング-創業融資相談・申請サポートをご覧ください。
- 売上計画で創業融資が否決になる理由
- 売上予測に必要な実現可能性と根拠
- 業種によって異なる売上計画の立て方
- 開業後、売上が計画どおりになるとは限らない(実体験あり)
- 創業融資と売上計画のよくある質問
- 併せて確認-関連解説|創業融資で否決につながる主な理由
- まとめ|売上予測の根拠不足による否決を防ぐために
売上計画で創業融資が否決になる理由

創業融資で売上計画が重要になる理由
創業融資の審査では、返済できるのかを確認するために、申込者がどのような「事業を行い」、「どの程度の売上・利益の見込み」があるのかが重要になります。
しかし、これから開業する創業融資申込者は売上実績が無いため、創業計画書に記載する売上計画が、融資判断に大切な項目の一つとなっています。
金融機関が確認する事項
金融機関は、主に以下の内容を確認しています。
売上計画から確認したい主な事項
- 事業として継続的な売上を確保できる見込みがあるか
- 売上見込みの根拠と実現可能性
- 売上に対して必要な経費を支払っても事業を継続できるか
- 事業から得られる収益によって借入金の返済を続けられるか
- 融資担当者にわかりやすく説明できるか
売上計画は、単に「いくら売れる予定なのか」を示すものではありません。
事業の収益性・継続性・返済可能性を検討するための基礎となる情報でもあります。
売上計画の不備が融資審査に与える影響
売上計画策定において、根拠の無い計算方法や、あまりにも現実味の無い数字は、融資担当者に不信感を与えてしまい、審査否決の原因になりかねません。
さらに、売上計画を元に利益・返済額を見積もるわけですが、その売上計画自体に問題があれば、利益や返済に関する予測の正確性が低い数字になってしまいます。
売上計画の問題は全体に波及する
売上計画は、事業の収益性・事業継続性・返済計画の基礎となるため、創業計画全体の評価にも影響する可能性があります。
そのため、自己資金や個人信用情報その他の要件を満たしていても、売上計画一つで否決につながることもあるため、丁寧に計画を策定する必要があります。
否決要因に連動する考え方
自己資金、事業経験、個人信用情報、通帳の内容、税金等の支払い状況なども否決要因となります。
これらの否決要因の他にも「返済計画」や「返済財源」が売上計画に連動します。返済計画等は創業融資申請サポートページの創業融資で大切な6箇条にて各解説ページを設置しております。ご参照くださいませ。
売上予測に必要な実現可能性と根拠

売上実績が無いため、売上を予測して綿密に計画を立てなければなりません。
「予測なんてわからないから適当でいいや」で計画を立て、提出すれば、日本政策金融公庫等の融資担当者があきれてしまい、申請を受け付けてもらえなくなるかもしれません。
(例)お蕎麦屋さんの売上計画
蕎麦屋さんを横浜駅から徒歩10分の大通り沿いに創業し、かけそばを主力商品として計算してみましょう。
- 600円/客単価
- 200人/日来店
- 25日/月営業(週1定休日)
月商は「300万円」となります。
果たして、創業でここまで売り上げることは可能でしょうか。
融資担当者に「え?この場所・商品・単価でこんなにお客さんが来て売上を出すことができるんですか?」とびっくりされる可能性は高そうです。
「たぶんこれくらいはお客さんがくると思うので」と伝えれば、売上算定の根拠に乏しく、実現可能性は低いと判断されて再計算を求められるか、最悪、その場で否決となる可能性もゼロではありません。
上記の例から見る売上予測で問題となりやすい点
- 単価は妥当な価格か・競合調査を行った上での計算根拠なのかなど
- 単価が高い気もするが設定価格に根拠はあるのかなど
- 場所的にお客さんに見つけてもらえるのか・来てもらえそうなのかなど
- こんなにお客さんが来るほど回転できるのか
- 売上予測と算定根拠・実現可能性に矛盾はないか
売上予測を立てるには、様々な調査・検討が必要です。
もし、(例)のように売上計画を立てて創業融資申請をした場合、日本政策金融公庫等の面談時に、売上の根拠を説明できるようにしておくことが重要です。
業種によって異なる売上計画の立て方

売上計画の立て方は、事業内容や業種によって異なります。
店舗で商品を販売する事業と、専門的なサービスを提供する事業、設備を使用して製造・加工する事業では、売上が発生する仕組みが違うためです。
ここでは、代表的な業種を例に、売上金額を考える際の基本的な構造をざっくりご紹介します。
飲食店・小売業|客単価×客数
飲食店や小売業、一部のサービス業では、客単価と客数をもとに売上を見積もることがあります。
客単価 × 客数 = 売上高
先ほどの例で、客単価600円×1日200人にて1日の売上を出し、これに営業日数を掛けると月商になります。
蕎麦屋さんでもかけそば、つけそば、天ぷらそばなどの商品点数、各々の価格設定等によって変わります。
実際の客数は、具体的業種、立地条件、商圏、顧客層、回転率、営業日数の変動、季節、集客方法などによって予測が大きく変動します。
受託サービス業|単価×案件数
士業、コンサルティング、制作業、各種受託業務などでは、案件単価と受注件数をもとに売上を見積もることがあります。
案件単価 × 受注件数 = 売上高
例えば、1案件10万円、月10件を受注する計画であれば、月商100万円となります。
問い合わせから商談、契約に至るまでの過程や、案件ごとの受注単価、業務の提供期間などによって売上の発生状況は変わります。
また、案件の内容によっては、契約時点と売上計上時点が異なることもあります。
予定している受注件数と単価が、実際の営業方法や契約条件に合っているかを確認する必要があります。
自動車整備業|設備能力と作業件数
当事務所代表は自動車整備業の法人経営経験があるので取り上げました。
物販(部品・カー用品の販売)と、サービス業(物販が無い修理など)の複合となり、自動車整備業の売上予測は複雑になります。
売上を考える際の主な要素
- 製品販売単価
- 整備作業ごとの販売単価
- 自動車整備士個人の作業能力
- 作業スペース・人員
- 稼働日数・稼働状況
- 車検の集客方法
創業時の売上予測なので、詳細である必要はありませんが、物販・サービス販売を分ける場合、複合で考える場合があります。
必ず増やしていかなければならないサービスとして「車検」があります。
集客方法も難しく、売上予測を立てる上で考慮要素が多く、難易度の高い業種と言えます。
このように業種ごとに売上構造を把握し、実際の事業内容に合った計画を立てる必要があります。
開業後、売上が計画どおりになるとは限らない

体験談|開業直後から予定売上を達成できなかった話
当事務所代表は、2011年2月に、神奈川県藤沢市にて中古車販売店として創業しました。
皆様ご存じの通り「東日本大震災」が同年3月11日に発生しました。
この影響を大きく受け、中古車オークション加盟店審査が2週間遅れ、加盟時期がずれ込みました。さらに、仕入れ相場が異常なほど高騰、その他様々な要因により2月~8月までの7か月間、中古車販売台数はゼロでした。
信用保証協会付き銀行融資申請時の売上計画には遠く及ばない結果となりました。
なかなか結果に結びつかない中、試行錯誤により、過去働いた車屋さんへの営業、友人から買い取った車両の販売、ヤフーオークションで故障している車両を安く仕入れて自分で修理して販売するなど様々な手段を実行しました。
これらの手段が功を奏し、同年9月からやっと中古車を販売することができるようになり、黒字化できるようになっていきました。
当事務所代表のような状況は稀ですが、このように、予定した計画通りの売上目標が達成できないこともあり得るため、売上計画の修正が必要になる可能性も考慮して、様々な方法を柔軟に考えて行動できるようにしておく必要があります。
集客・受注・売上発生までの時間差
開業直後は事業の認知度や顧客基盤が十分でないこともあり、売上が安定するまでに時間を要する場合があります。
事業によっては、営業活動を開始してから売上が発生するまでに時間差があります。
例えば、ホームページは新規ドメインでの公開から問い合わせが入るまで、1~3か月程度かかることも珍しくありません。
この通りに売上計画を作成(3か月間売上ゼロ)した場合、この3か月ゼロの不安を払しょくできる集客・売上計画を立てられなければ、否決となる可能性が高くなります。
逆に、「集客計画・売上計画を丁寧に組み立てていく」ことや、「どんな苦境でも頑張れることをアピールする」ことで、融資担当者への心証をプラスに転換することも可能です。
副業も視野に入れる
開業当初は、売上が立たない、または、売上が低いことをあらかじめ想定して創業計画に盛り込むことも検討できます。
ただし、本業の時間が削られてしまうと、融資担当者から「この創業計画は大丈夫なのか」との心証を与えることがあるため、細かい調整が必要になります。
FAQ創業融資と売上計画のよくある質問
創業融資申込み前に確認しておきたい疑問をまとめました。
- 創業前で売上実績がなくても、売上予測は必要ですか?
- はい。創業前は売上実績がないからこそ、創業計画書に記載する売上予測が重要になります。金融機関は、売上予測の根拠や実現可能性などを確認し、事業の収益性や返済可能性を検討します
- 売上計画は客単価×客数で計算すればよいですか?
- 客単価×客数は、売上金額を算出する方法の一つです。しかし、計算結果が正しくても、その客数を獲得できるとは限りません。融資審査では、計算方法だけでなく、採用した数字の根拠や実現可能性も重要になります。
- 開業直後の売上を低く予測すると、創業融資で不利になりますか?
- 開業直後の売上予測が低いことだけで、直ちに不利になるとは限りません。ただし、売上が少ない期間の事業継続や借入金の返済をどのように考えているのかは、確認される可能性があります。売上を高く予測すれば有利になるというものでもありません。
- 売上予測が外れた場合、創業融資の審査に影響しますか?
- 創業融資の申込み時点では、将来の売上を正確に予測することはできません。そのため、創業融資申請時の予測と開業後の売上実績が異なることになったとしても仕方のないことです。申込み時に合理的な根拠をもって売上を予測しているかが重要です。融資の契約に反するようなことが無い限り、売上が計画通りにならないことそれ自体は、融資金額を返還するということにはならないのでご安心ください。
- 売上予測の根拠が弱いと創業融資で否決されますか?
- 売上予測の根拠が不明確で、実現可能性を十分に説明できない場合は、まず確認・修正を促されることが想定されます。修正の意思がない、又は著しく根拠に乏しい場合は、創業融資の否決要因となる可能性があります。
まとめ|売上予測の根拠不足による否決を防ぐために

創業融資の売上計画は、「こんな感じの数字でいいだろう」と、単に計算した数字を創業計画書へ記載すればよいものではありません。
売上予測の根拠や実現可能性を十分に説明できなければ、創業融資の否決につながる可能性があります。
– この記事のまとめ –
- 売上計画は創業融資の審査において重要な判断材料の一つ
- 計算上の売上金額と、実際に達成できる売上は異なる
- 売上予測の立て方や確認すべき内容は業種によって異なる
- 開業後の売上が予測どおりに発生するとは限らない
- 売上予測の根拠不足は、創業計画全体の評価にも影響する可能性がある
自分では妥当な売上予測だと思っていても、金融機関から同じように評価されるとは限りません。
創業融資の申込み前に、売上計画の根拠と実現可能性を確認しておくことが大切です。
売上予測の算定・売上計画書の作成は当事務所へ
売上計画の根拠不足で、創業融資が否決になる前に――
行政書士e-LOOP法務事務所では、創業融資申込み前の個別状況を確認し、売上予測の根拠や実現可能性を含めた創業計画・資金計画についてご相談を承っています。
また、創業計画書の策定・作成支援、売上計画を盛り込んだ「予定損益計算書(P/L)・予定資金繰り表」等の作成支援を含めた創業融資申請サポートにも対応しています。
支援内容・料金・進め方については、戦略型創業支援コンサルティング-創業融資相談・申請サポートをご確認ください。融資審査の通過を保証するものではありません。