ホームページ制作の落とし穴 – 契約書の注意点と確認ポイント
ホームページ制作の契約書は罠だらけ
「あとで“言った・言わない”でモメたくない」
「契約してから後悔したくない」
「こんな内容だなんて知らなかった」
ホームページ制作でもめる話を、たまに耳にします――
ホームページ制作のトラブルの多くは、技術の問題ではなく「契約内容があいまい」「説明がうやむや」「なんかモヤモヤする」のまま契約を締結することで発生します。
逆にいえば、契約書すべてに目を通し、特に押さえたい数か所をきちんと確認しておくことで、その後のモヤモヤはぐっと減らせる――ということでもあります。
依頼前に読んで、トラブル予防
この記事では、契約書全体に目を通すことは前提として、特に確認したい8つの注意点をやわらかくお伝えします。むずかしい言葉はできるだけ使わず、「ここは特に確認しておきたい」という的をしぼってご案内します。
執筆・監修:行政書士 𠮷岡 秀充
ホームページ制作の契約書、どこを見ればいいの?

契約書と聞くと、「専門用語ばかりで、どこを読めばいいのか分からない」と身構えてしまう方は多いですし、実際にわかりにくい・理解が難しいケースが多いと思います。
ホームページ制作の契約書は、家を建てる前の設計図と見積書に近いものです。「どこまで作るのか」「いくらかかるのか」「完成したものは誰のものか」「途中でやめたらどうなるのか」――この“あたりまえ”が、紙にきちんと書いてあるかどうか。
大前提として、契約書はすべてに目を通すことが必要です。
そのうえで、特に見落とすと痛い“要所”を押さえる。
ここは、はっきりお伝えしておきます。
契約書は、署名又は記名押印すればその内容に拘束され、「読んでいなかった」「聞いていなかった」は、たとえ依頼者にとって不利な内容であっても、原則として通りません。
だからこそ、面倒でも、まずは全文に目を通すこと。
そのうえで、この記事で挙げる8つは特によく確認し、わからない点があれば制作事業者に細かく確認しましょう。
「なんかよくわからないけど大丈夫だろう」
と、何となく進めることの無いようにしましょう。
この記事を読み終わるころには、自分の契約書(またはこれから目を通す契約書)の、特にどこに目を向ければよいか見えてくるかと思います。
トラブルの多くは「契約書のあいまいさ」から生まれる

「これくらいやってくれると思っていたのに」
「これくらい簡単にできるでしょ?」
「その修正は簡単ではないので別料金です」
「データは渡せません」
「構築したホームページは使用できなくなります」
多くのホームページ制作トラブルは「制作者側圧倒的有利の内容」「Web業界では一般的だけど、依頼者としては知らない」「取り決めが無かった」「契約内容があいまい」「認識ズレ」「解釈違い」などからトラブルへと発展するわけです。
たとえば、こんな“あいまい”が火種になりやすいポイントです。
- どこまでが制作範囲なのか、はっきりしていない
- 完成したデザインやコードが「誰のものか」書かれていない
- 修正は何回まで無料対応が可能なのか決まっていない
- 解約したいとき、何がどうなるのか空白になっている
どれも、契約のときには「まあ大丈夫だろう」と流してしまいがちな部分です。
でも、いざ問題が起きるのは、たいてい“動こうとした瞬間”――
実際に他のWeb会社にお願いする(乗り換え)やデータの引き渡しでつまずくケースは、Web会社を乗り換えできない…データをもらえないときの対処法でも詳しくお伝えしています。
だからこそ、契約の“入口”で確認しておく。それが効果的なホームページ制作トラブルの予防策となります。
当行政書士事務所の契約書リーガルチェック・Wordでわかりやすいレビューサービスがあります。契約書でご不明な点等ございましたら、ぜひご活用くださいませ。
契約前に確認したい8つの注意点|チェックポイント

大事なので繰り返しになりますが、契約書は全文に目を通すのが基本です。
そのうえで、特にトラブルになりやすい8つを挙げます。まずは一覧でざっと眺めて、それから一つずつ見ていきましょう。お手元に契約書があれば、照らし合わせながら読むのがおすすめです。
| チェック項目 | ここを見る | あいまいだと… |
|---|---|---|
| ①制作範囲 | どこまで作るか | 「ここまでやってくれると思った」のすれ違いが起きる |
| ②著作権・データの帰属 | 完成物は誰のものか | あとで自由に作り変えられない / データを渡してもらえない |
| ③修正回数・追加費用 | 何回まで無料か | 「その修正は別料金です」で予算が膨らむ |
| ④納期・検収 | いつ・どう完成扱いか | 「完成した / していない」でモメる |
| ⑤保守・運用と月額 | 月額に何が含まれるか | 解約=サイトごと止まる構造になっていることも |
| ⑥解約・中途解約 | やめるときどうなるか | 違約金や引き渡し条件が“その都度交渉”になる |
| ⑦素材・原稿の提供責任 | 誰が何を用意するか | 「原稿待ち」で納期が延び、責任もなあなあで流される |
| ⑧再委託の取り扱い | 外注の有無と責任 | 中小受託事業者(いわゆる「下請け業者」)・特定受託事業者(いわゆる「フリーランスなどの個人」)のトラブルで、責任の所在や情報漏えい対応があいまい |
①制作範囲(どこまで作るか)が書かれているか
「ホームページを作ります」だけでは、範囲が広すぎます。トップページだけなのか、何ページ分なのか。お問い合わせフォームは付くのか。スマホ表示(Webレスポンシブ)の対応は含まれるのか。ブログ機能はあるのか――。
作る目的と範囲(テーマ・構成・ページ数・機能)が具体的に書かれているかを確認しましょう。ここがはっきりしていれば、「思っていたのと違う」は起きづらくなります。
②著作権・データの帰属
完成したデザイン・コード・文章・画像が「誰のものになるのか」。ここは、いちばん見落とされやすく、いちばん後悔につながりやすいポイントです。
お金を払えば自動的に自分のもの、とはなりません。著作権は原則として“作った側”に発生するため、譲渡や利用範囲の取り決めがないと、あとから自由に作り変えられなかったり、データを渡してもらえなかったりします。
著作権法27条・28条、著作者人格権について書かれているかが、大きな分かれ目になります。
契約内容に「著作権を譲渡する」との記載があるだけでは不十分です。
権利まわりの考え方は、ホームページの著作権は誰のもの?制作費を払っても権利は移らないでくわしく解説しています。併せて読むと、ここがぐっと分かりやすくなります。
③修正回数と追加費用の条件
「修正は何回まで無料で、何回目から、いくらかかるのか」。ここが決まっていないと、あとから「その修正は追加費用です」と言われて、予算がふくらんでいきがちです。
制作会社としては無制限に修正を受け入れたら大赤字になりますし、依頼者側としては無料修正回数は多いほうがいいでしょう。
無料修正の回数、追加修正の単価、そして「どこからが“修正”で、どこからが“修正ではなく追加制作・新規制作”扱いになるのか」。この線引きが書いてあると、お互い気持ちよく進められます。
④納期と検収のルール
「いつ完成なのか」「何をもって“完成(検収OK)”とするのか」。ここがあいまいだと、「完成した・していない」ですれ違います。
納品予定日と、確認(検収)の期間・方法を確認しましょう。「納品後◯日以内に連絡がなければ検収完了とみなす」といった取り決めがあると、ダラダラ長引かず、双方にとって安心です。
⑤保守・運用の範囲と月額費用
月額の保守費用がある場合、その中に何が含まれているかを見ておきましょう。更新作業・サーバー・ドメイン・データ管理まで、すべてがまとめて入っていることがあります。
便利な反面、解約=すべてが止まる(ネット上で非表示など)構造になっていることもあります。やめた瞬間にサイトごと使えなくなる設計になっていないか、ここは確認しておきたいところです。
⑥解約・中途解約時の取り決め
「やめるとき」「他社へ移すとき」に、何がどうなるのか。実は契約書でいちばん空白になりやすいのが、この“出口”です。
中途解約できるのか、違約金は発生するのか、データやドメインはどう引き渡されるのか――。制作~完成、保守運営は丁寧に書いてあるのに、終わるときの記載が無い。これにより契約が解除できず、渋々継続している企業もあるくらいです。出口の取り決めの大切さは、乗り換えできないときの対処法でも触れています。
⑦素材・原稿の提供責任
写真や文章(原稿)を「誰が、いつまでに用意するのか」。この「いつまで」を決めることはなかなかありませんが、発注者側の提供が遅かったがために納期が伸びても責任は取りませんという内容が一般的です。
依頼側が用意するもの・制作側が用意するもの、いつまでに受託事業者に渡せばいいかを確認しておくと、進行がスムーズになります。
⑧再委託の取り扱い(外注されるかどうか)
意外と知られていませんが、契約したWeb制作会社は、作業の一部または大部分、とんでもない事業者は全部を別のWeb制作会社やクラウドソーシング・フリーランスに再委託(外注)していることがあります。窓口の会社と、実際に手を動かす人が別――という構造です。
これ自体が悪いわけではありません。
ただ、ここでは制作会社と再委託先での契約・その他トラブルが、そのまま依頼者側のリスクになってしまうケースが、実際に起きています。だからこそ、ここは契約書で確認しておきたい注意点のひとつです。
確認しておきたいのは、次の3点です。
- 責任の所在――再委託の禁止(未公開の事業計画を他者に知られたくないなどの理由)や、再委託OKの場合は、再委託先のミスや納期遅延でも、契約した受注Web会社が最後まで全責任を負うことが明記されているか。「再委託先の責任なので当社は関与しません」となっていないか。
- 秘密保持(NDA)――こちらが渡した情報や素材、セキュリティ問題について、再委託先も同じ水準の秘密保持義務となっているか。情報漏洩が起きない仕組みになっているか。
- 損害賠償――再委託先が原因で損害が出たとき、誰が・どこまで賠償するのか。賠償の範囲や上限が決まっているか。
ひとことで言えば、「誰に頼んでも、依頼事業者と契約したWeb事業者が責任を取る構造」となっているか――ここがポイントです。
再委託を前提にしている会社ほど、この条項が空白になっていると、いざというときに責任を取ってもらえずにそのまま放置されてしまいます。
< 再委託のポイント >
できれば誰に委託するかも聞いておきたいところです。なぜ聞くか――依頼を受けたWeb制作事業者が、「知識・技術の低いWeb事業者」・「フリーランス」・「副業として制作している人」に「超安価で」再委託することがあるためです。
「知識・技術の低い人や事業者として責任が取れない人にホームページを作ってほしくない」という場合は、「再委託先を限定」したり、「原則再委託禁止・再委託する場合の事前承認制」を取り入れるのもいいかもしれません。
「言った・言わない」を防ぐ書面のつくり方

契約書の全文に目を通し、注意点も押さえた。契約もイイ感じに進んでいる――
それでも合間に「口頭でOKと言われたから大丈夫」が混ざると、あとで食い違うことがあります。大切なのは、大事なことは“紙に残す”という、シンプルな習慣です。
記憶はあいまいでも、書面は変わらない。
とはいえ、いきなり完璧な契約書を作る必要はありません。次のような“ゆるやかな書面化”でも、十分にトラブルは防げます。
口頭で決めたことは、メールで一言残す
打ち合わせで決まったことは、その日のうちに「本日決めた◯◯の件の再確認です、この○○の内容で進めてください」とメールで一言送っておく。
これだけで、あとから「言った・言わない」になりにくくなります。返信が残れば、それも立派な記録ですし、返事が無ければ異議を唱えなかった(この内容は違う)として責任追及が可能です。
「発注者・依頼者の双方に記録を残す」
これは予防法務の観点からトラブル回避として非常に大切なことです。
契約書に“書いていないこと”は足してもらう
契約書に著作権や解約のことが書かれていなければ、記名押印(署名)する前にたずねて、追記してもらいましょう。サインする前なら、修正のお願いはしやすいものです。
逆に、サインしたあとは交渉のハードルが上がりますが、しっかり話し合って、ホームページ制作補足や変更で使用する合意書として「覚書」を使用するケースが多いです。
あいまいな言葉は、具体的な数字や範囲に
「適宜修正します」「一般的な範囲で対応します」といった言葉は、あとで解釈が割れます。「修正は3回まで無料」「対応端末はPC・スマホ」のように、数字と範囲に置き換えてもらうと安心です。
Our View
行政書士の視点|契約書は“気持ちよく取引をするための安心”

最後に、行政書士として大切にしている考え方をお伝えします。契約書は“守りの道具”だと思われがちですが、私たちはもう少しちがう見方をしています。
契約書は、お互いの安心を支える「土台」
契約書というと、「もめたときに戦うための武器」は一つの視点ですが、他にも取り決めを証拠として残すことで安心して依頼するための土台でもあります。
“予防法務”という考え方
トラブルが起きてから対処するのではなく、起きないように先に整えておく。これを予防法務と呼びます。
契約書の全文に目を通し、特に大切な数か所をきちんと押さえておくだけで、将来の「言った・言わない」「データが渡せない」「乗り換えられない」「外注先のトラブルに巻き込まれる」など、事前にまとめて防げます。
行政書士e-LOOP法務事務所では、どうしている?
当事務所のホームページ制作サービスでは、サービス提供にあたり、制作範囲・著作権の帰属・解約時の取り扱いなどを契約の段階で明確にすることで、依頼事業者様・当事務所双方の予防法務として機能します。
FAQよくある質問
契約前のご相談で、とくに多い質問をまとめました。
- ホームページ制作を口約束だけで進めても大丈夫でしょうか?
- おすすめはしません。口約束は記憶に頼ることになり、あとから「言った・言わない」になりやすいためです。立派な契約書でなくても構いません。決めたことをメールで残す、簡単な書面を交わすだけでも、トラブルはぐっと減らせますので、形に残しておくと安心です。
- 契約書が専門的で読めません。全部に目を通すべきですか?
- はい、大変かと思いますが全文目を通してください。「大丈夫だろう」で済ませないことが大切です。署名・押印したら、もし、依頼者に大きな不利益な条項が含まれていたとしても、その内容に拘束されるためです。「読んでいなかった」は原則として通りません。もし、専門用語でわからない、Web制作会社に聞いてもわからない場合は、専門家に相談しましょう。当事務所の契約書リーガルチェック・Wordでわかりやすいレビューサービスのように専門家が対応可能です。
- 「著作権は制作会社のもの」と契約書に書かれていました。直してもらえますか?
- 修正可能かどうかは依頼予定の事業者様に聞いてみましょう。署名・記名押印の前であれば、譲渡や利用範囲についてお願いして追記・修正してもらえる可能性があります。めずらしいことではなく、著作権が制作会社の権利となっていることが多く、明記がなければ、これも制作会社の権利となる可能性があります。
- 修正回数に制限があるのは普通のことですか?追加費用はどのくらい?
- 無料修正の回数に上限を設けること自体は、よくある取り決めです。だいたい最終段階(納品前検収など)での無料修正回数は2~3回であることが多いです。追加費用は「軽微だけど手間を要するもの」「大規模修正を要するもの」「修正不可(再新規制作)」で異なります。見積書を発行してもらい、確認することが必要です。
- 解約したいとき、違約金が高額になることはありますか?
- 制作会社によります。違約金無しで着手金のみとなるケース~中途解約違約金が設定されている場合があります。契約前に「途中でやめる場合、どうなるか」を確認しておくことが大切です。
- 頼んだ会社が、作業を外注(再委託)していることがあると聞きました。注意点は?
- 再委託そのものは珍しくありません。再委託先はフリーランスや副業などの個人であることも少なくないため、責任意識の低さからミスや情報漏えいが、そのままご依頼側のリスクにつながるケースが実際にあります。契約書で確認したいのは3点です。①再委託先のトラブルでも受託Web制作会社が「全部」責任を負うか、②渡した情報や素材が再委託先にも同じ水準の秘密保持義務で引き継がれるか、③損害が出たときの賠償の範囲・上限が決まっているか。もし再委託に抵抗がある場合は、再委託の制限条項(原則再委託禁止、事前承認制など)の追加が可能かどうか聞いてみるのもいいかもしれません。
- 契約前に、内容をチェックしてほしいだけの相談もできますか?
- はい、もちろんです。「これから頼む前に、契約書を一度見ておきたい」というご相談は大歓迎です。著作権相談員・行政書士の視点から、契約書の全体に目を通したうえで、確認しておきたいポイントを一緒に整理します。サインする前のひと手間が、後々のトラブルを回避する「予防法務」となります。
まとめ|まずは全部に目を通すことから

契約書は、署名や記名押印したら、原則その契約内容に拘束されます。
困りごとの大元は、たいてい契約の“入口”にあり、依頼前にきちんと確認・確定しておくだけで、その後のモヤモヤ・不安を減らすことができます。
– この記事のまとめ –
- 契約書は、まず全文に目を通すこと
- わからない部分は、説明を求めて納得できてから契約締結する
- 特に揉めやすい8つの注意点:制作範囲 / 著作権・データ / 修正・追加費用 / 納期・検収 / 保守・月額 / 解約・引き渡し / 素材・原稿 / 再委託
- 再委託されるなら、責任の所在・秘密保持・損害賠償を確認
- 大事なことは覚書など“紙に残す”、簡易的な確認事項はメールなど双方に残る形をとる
- 契約書は“もめないため”の他、“安心するため”の土台
- 折り合いがつかない場合に渋々契約しない
「契約書のどこを見ればいいか、一緒に確認してほしい」
「最初から、安心して任せられる制作にしたい」
「権利や解約まで、ちゃんと整理して進めたい」
そんなお気持ちがあれば、ぜひ行政書士e-LOOP法務事務所へ一度ご相談ください。
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